坂本会計

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2025.6 相続・贈与

賃貸不動産があると相続税が減る?

1.アパート経営で相続対策?

「アパート経営で相続対策」

ハウスメーカーの広告等で見かけることがあるフレーズです。本誌面では賃貸不動産を有している場合に相続税が少なくなるしくみについて解説します。

 

2.賃貸不動産でない場合

相続財産は評価額4,800万円の土地と1,800万円の建物のみ。法定相続人は子3人。わかりやすくするために基礎控除額はないものとします。

相続税額は3人合計で840万円となります。

相続税額の計算プロセスは次の通りとなります。

(4,800万+1,800万)×1/3=2,200万

2,200万×15%-50万=280万・・1人あたりの相続税額

280万×3人=840万

 

3.賃貸不動産の場合

2と同じ前提で、不動産が賃貸アパート、借地権割合は60%、貸家権割合は30%、賃貸割合は100%とします。

相続税額は3人合計で629.4万円となります。

相続税額の計算プロセスは次の通りとなります。

土地の評価額=4,800万-4,800万×60%×30%×100%)=3,936万

建物の評価額=1,800万-1,800万×30%×100%=1,260万

(3,936万+1,260万)×1/3=1,732万

1,732万×15%-50万=209.8万・・1人あたりの相続税額

209.8万×3人=629.4万

 

4.なぜ相続税が減るのか?

2と3とを比べると、所有している不動産を賃貸しているかどうかだけで、相続税額が3人合計で210.6万円変わります。

自身が所有している建物を賃貸している場合、その建物の評価額は借家権割合と賃貸割合分、少なくなります。令和7年6月時点で借家権割合は全国共通で30%です。賃貸割合は建物の床面積のうち相続発生時点で賃貸の用に供されている部分の床面積の占める割合です。相続発生時点で空室となっている部分は賃貸の用に供されている部分に含めません。

貸家・貸アパートの建っている土地の評価額は借家権割合と賃貸割合分に加えて借地権割合分も少なくなります。借地権割合は対象の土地の所在地によって異なります。

このように、賃貸不動産の場合は、借家権割合、賃貸割合、借地権割合の分、評価額が減額されるため、相続財産の評価額が下がり、相続税が少なくなります。

 

5.借入だけでは相続税は少なくならない

金融機関から借入をすると相続税が減るとおっしゃる方にお会いすることがありますが、これは誤りです。1億円を借りたら1億円の現預金が増えるため借入をしただけでは相続財産の額に変化は生じません。借りたお金を使って賃貸不動産を取得します。取得した賃貸不動産の評価額には先述の通り借家権割合や賃貸割合、借地権割合の分の減額が加味されます。こうなることで相続財産の評価額が下がり、相続税が少なくなります。(三代川)