令和7年3月期より賃上げ税制が変わります
1.賃上げ税制とは
賃上げ税制とは、企業が前年度よりも給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税又は所得税から税額控除できる制度です。この制度は平成25年度税制改正により導入されており、以前は所得拡大促進税制と言われていました。
令和7年3月期決算よりこの賃上げ税制の制度が変わります。今回は令和7年3月期決算よりどのように変わるのかを解説します。
※賃上げ税制は、企業規模によって内容が異なります。本誌面では資本金1億円以下の中小企業及び個人事業主に適用される制度を解説します。
2.どのぐらい増加したら適用となる?
賃上げ税制は、全ての雇用者に対する給与等支給額が、前期に比べ1.5%以上増加した場合に適用されます。
雇用者には、パートアルバイトを含みますが、使用人兼務役員や役員の親族等は含みません。また、賞与は給与等に含みますが、退職金についは含まず、助成金を受領している場合は給与等支給額から助成金額を減額した金額で判定します。
3.減税額はどのぐらい?
給与等支給額が前期に比べ1.5%以上増加した場合は給与等支給額の増加額の15%、2.5%以上増加した場合は給与等支給額の増加額の30%を減税することができます。
なお、先述の金額と賃上げ税制適用前の法人税額又は所得税額の20%を比べて、法人税額又は所得税額の20%の方が小さい場合には法人税額又は所得税額の20%が減税限度額となります。
4.5年間繰り越すことができます
賃上げ税制はこれまでは繰り越すことができませんでした。
もし、給与等支給額が前期比1.5%以上増加していても、決算が赤字のため法人税額が0円の場合、その期における減税額は0円となります。
これまではこれで終わりで、決算が黒字で法人税額が発生していれば減税できていた金額は切捨てとなっていました。
これが令和7年3月期より、5期に渡り繰り越すことができるようになります。
繰り越すためには以下の2点を満たす必要があります。
①減税できなかった金額が発生した事業年度以後の全ての事業年度において、賃上げ税制に関する明細書を法人税(所得税)申告書に添付すること
②繰り越されてきた減税額を控除しようとする事業年度において、給与等支給額が前期に比べ増加していること
5.決算の際に確認しましょう
4で解説した内容のうち、①については法人税申告書を作成する会計事務所・経理担当者が明細書を作成し、税務署に提出することが必要となります。これを怠ると、減税できると思った年度において減税することができなくなってしまいます。
決算の際に会計事務所・経理担当者とコミュニケーションを取る際は、今後は賃上げ税制に関する明細書は添付しているのかどうかを確認するようにしましょう。(三代川)