坂本会計

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2022.5 個人

役員に資産を低額で譲渡した場合の課税関係

1.役員への低額譲渡

法人が所有している不動産や自動車を役員に譲渡したいという相談を受けることがあります。税金の計算上、適正とされる金額で譲渡する場合は税金上の問題は生じませんが、適正とされる金額よりかなり低い金額又は無償での譲渡を希望されているケースがあります。本誌面では法人から役員に対して資産を低額で譲渡した場合の課税関係についてまとめます。

 

2.役員に対する課税

役員が、法人から低額で資産を譲り受けた場合、役員に対して所得税・住民税が課税されます。

所得税・住民税の課税対象となる金額は、税金上適正とされる金額と実際の売買金額との差額(経済的利益)です。

役員が不動産や自動車等の譲渡をした日に賞与を受領したとみなされ、法人は賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表により計算した所得税額を役員から預かる必要があります。

なお、経済的利益の額が前月中に受領した通常の給与の額の10倍を超える場合は、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)により計算した所得税額を預かる必要があります。

 

3.法人に対する課税

法人が、役員に対して低額で資産を譲渡した場合には、役員に対して2で触れた経済的利益の金額を賞与として支給したものとみなされます。

役員に対して支給した賞与を法人税の計算上、損金の額に算入するためには、事業年度開始の日から概ね3ヶ月以内に税務署に対し事前確定届出給与に関する届出書を提出する必要があります。もし、この届出書を提出せずに役員に対して賞与を支給した場合並びに経済的利益を供与した場合には、支給した金額並びに経済的利益の金額は法人税の計算上、損金の額に算入することはできません。

 

4.ダブルで課税

法人・役員間で低額で資産の譲渡を行った場合、2と3で先述した通り、役員にも法人にも税負担が生じてしまいます。

このような税負担を回避するためには、税金の計算上、適正とされる金額での譲渡が望ましいと考えられます。

 

5.適正とされる金額とは

税金の計算上、適正とされる金額は、法人と関係ない第三者と売買する場合の取引金額です。

第三者と売買する場合の取引金額の算出方法は、不動産であれば不動産業者に、自動車であれば自動車業者に査定してもらうことが客観性が高いと考えられます。ただし、さまざまな事情によりこれらの業者に査定してもらうことが難しいケースもあると思われます。そのような場合で、税金の計算上大きな弊害が生じなそうな時には、土地は路線価×10÷8の金額、建物や自動車は税務上の帳簿価額を適正金額と考えるケースもあります。(三代川)