坂本会計

トピックス

2023.3 個人

相続した空き家を売却した場合の特例

1.空き家の相続

親と別居している子が、亡くなるまで親が住んでいて空き家となった土地建物を相続するケースは少なくありません。

本誌面では、相続した空き家を売却した場合の譲渡所得の特例について解説します。

 

2.譲渡所得の計算方法

土地建物を譲渡した場合の譲渡所得は次の算式により計算します。

①土地建物の売却により得た金額

②譲渡した土地建物の購入金額

③売却のために要した費用

④譲渡所得=①-(②+③)

①より②+③の金額が大きい場合は、確定申告を行う必要がありません。

建物を売却した場合の②は、購入時に支払った金額をそのまま使用するのではなく、購入時に支払った金額から減価償却費相当額(※)を差し引いた金額を使用します。

(※)購入から売却までの価値減少部分を数値化したもの

 

3.購入時に支払った金額がわからない場合

売却をした人が、売却をした土地建物を相続により取得した場合、②の金額は亡くなった人が購入時に実際に支払った金額を使用します。

しかし、購入時に実際に支払った人が亡くなっているため、購入時に実際に支払った金額がわからないケースが少なくありません。この場合、②の金額は原則的には①の金額の5%となり、④譲渡所得の金額は大幅な黒字となってしまいます。このような場合に譲渡所得の金額を3,000万円減額できる特例「相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除」があります。

 

4.特例を適用するための条件

相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除を適用するためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。

ⅰ 売却した土地・建物の両方を、被相続人から相続・遺贈等により取得したこと。

ⅱ 相続が発生したのが平成31年1月2日以降であること。

ⅲ 建物が区分所有建物(※)に該当せず、昭和56年5月31日以前に建築されていること。

ⅳ 空き家となった建物には、相続開始直前において、被相続人が居住していて、被相続人以外に誰も済んでいなかったこと。

ⅴ 売却先が第三者であること。

ⅵ 売却金額が1億円以下であること。

ⅶ 売却した土地建物が次のA、Bいずれかに該当すること。

A 建物又は土地建物両方を売却したこと

B 建物を取り壊した後に建物が建っていた土地を売却したこと

 

5.適用するために必要な書類

相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除を適用するためには、市区町村にて書類の交付を受け、確定申告書と一緒に税務署に提出する必要があります。利用を検討される方は早めに申請しましょう。(三代川)