坂本会計

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2018.8 相続・贈与

その預金口座は誰のもの?名義預金

1.それって相続対策?

お客さまに相続対策について質問をすると、子ども名義の預金口座にご自身のお金を移動していると回答されることがあります。この場合、子ども名義の預金口座のお金は誰のものになるのでしょうか?

 

2.名義預金

1のケースで子ども名義の預金口座に移動したお金を子どものものと取り扱うためには、あげた側ともらった側両方の合意が必要です。あげた側は無料であげたつもりであっても、もらった側に無料でもらったという認識がなければ、贈与は成立していません。贈与が成立していない以上、1のケースで子ども名義の預金口座に移動したお金は親のものとなります。

このように、贈与が成立しておらず、形式上だけ家族名義で預金している口座のことを名義預金と言います。

 

3.名義預金はなぜ発覚する?

全ての相続が対象というわけではありませんが、相続税の申告書が提出されると、税務署は被相続人だけでなく相続人名義の預金口座の取引履歴を金融機関から取り寄せることがあります。金融機関からの取り寄せは、相続人には内緒で実施されます。

被相続人、相続人双方の取引履歴を見たところ、被相続人の預金口座から出金された金額が、出金された日と同じ日に相続人の預金口座に入金され、入金された金額はそのまま手付かずだったとします。

相続税の申告書に、相続人の口座に移動したお金も相続財産として記載されていれば問題はありません。問題はこのお金を相続財産として記載していない場合です。税務署は、このお金は名義預金で、実質的には被相続人の所有であるから、相続財産に含めて修正申告してほしいと主張する可能性が非常に高いです。

 

4.名義預金認定を避けるには

子ども名義の預金口座にお金は移動したものの子ども名義の通帳は親が管理している場合、移動したお金は名義預金として認定されてしまいます。相続財産は減らしたいけど、子どもにあげると無駄遣いしてしまうから・・という理由でこのような資金移動をしている方が少なくないようですが、このやり方では相続財産は減りません。

移動したお金は子どものものであり、名義預金ではないと税務署に認めてもらうには、移動したお金を子どもが自由に使える環境にあったことを証明する必要があります。具体的には以下の2つを満たしていれば、子どもが自由に使える環境にあったことを証明することができます。

①移動したお金を入金した預金口座の通帳・銀行印を子どもが管理していること

②移動したお金を子どもの意思で実際に使用した履歴があること

 

5.中途半端は避けるべき

相続税を減少させたいのであれば、名実ともに子どもに贈与して、子どもにお金を自由に使わせるべきです。子どもにはあまりお金を渡したくないと考えるのであれば、子ども名義の預金口座にお金を移動することは止めて、自身の口座に留めておく。いずれかはっきりした形を採用すべきで、中途半端は避けるべきです。(三代川)