坂本会計

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2023.5 相続・贈与

事業承継税制の申請期限まであと1年です

1.事業承継の壁となるもの

長い期間に渡り黒字を積み重ねてきた会社が事業承継を検討する際に問題となることが多いのが、自社の株式の評価額が高く、後継者への株式の承継が容易ではない点です。本誌面では株式の評価額が高い会社において適用が想定される事業承継税制について、解説します。

 

2.あるべき株主構成

会社の支配権は代表者が誰かではなく、株式の保有率で決まります。例え代表者であっても、株式を全く又はわずかしか所有していなければ、会社の重要事項を決定する力はありません。

代表者が素早く意思決定をするためには、代表者が67%以上の株式を所有していることが望ましいです。67%以上を所有していれば、誰にも左右されずに意思決定をすることができるためです。

中小企業は、株式のほとんどを代表者が所有していることが多く、会社運営上は望ましい状態になっていると言えます。その反面、いずれ事業を承継する後継者がわずかしか株式を所有していないケースが多く、いかにして後継者に株式を集約させるかという点が課題となります。

 

3.事業承継税制の概要

事業承継税制は、先代から後継者に対し株式を移転しやすくするために2009年に創設された税制です。具体的には、後継者である受贈者・相続人等が、株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者が死亡等をした場合には、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されるという制度です。

一定の要件と先述しましたが、この税制を適用できる会社は、株式を贈与する時点で先代・後継者それぞれが次の要件を満たしている必要があります。以下では贈与税での適用を前提とします。

【先代の要件】

①これまでのいずれかの時期において会社の代表者であったこと

②贈与時に代表権を有していないこと

③先代とその親族とを合わせて株式保有率が50%超で、かつ同族内で筆頭株主であること

【後継者の要件】

①会社の代表者であること

②20歳以上であり、かつ役員就任から3年以上経過していること

③後継者とその親族とを合わせて株式保有率がかつ同族内で筆頭株主であること

 

4.特例措置の申請期限

事業承継税制は2018年度税制改正により特例措置が設けられ、これまでと比べ、納税猶予の範囲が広がっています。

この特例措置を適用するためには、2024年3月31日までに特例承継計画を作成し、会社の本店所在地のある都道府県に提出し、かつ2027年12月31日までに株式を贈与する必要があります。

来年3月までに特例承継計画を提出しないと、特例措置を適用することができなくなってしまいます。ご興味のある方、計画の作成・提出を検討してはいかがでしょうか。(三代川)