坂本会計

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2019.5 相続・贈与

思わぬ課税もありうる?不動産の名義

1.登記をするのが一般的

土地や建物の所有者は、自身がその土地や建物を所有していることを第三者に証明するために所有権について、保存や移転の登記を行うことが慣行となっています。

本誌面では、保存や移転の登記に際して、私たちが実際に受けた2つの質問について、解説します。

 

2.名義はどうすれば有利?

「(不動産の)名義はどのようにすれば有利なのですか?」

お客さまから受けた質問です。

相続発生時や夫婦や親子が共同で不動産を購入する際にどのような負担割合とするかを検討している段階であれば、この質問に問題はありません。

一方、既に誰がいくら負担をして不動産を取得するかが決まっている段階でのこの質問というのは問題があります。それは、不動産の名義というのは、その不動産を取得するために資金を負担した割合と一致するもので、自動的に決定されるものであるためです。

仮に、夫が頭金と住宅ローンの返済額全額を負担しているにも関わらず、不動産の名義を妻との共有名義とした場合、それは夫から妻に対して贈与を行ったこととなり、贈与税の課税対象となります。

相続時の税負担を軽減したいなどの理由により資金の負担割合とは異なる名義割合としているケースを散見しますが、それは贈与税の発生につながりかねません。資金の負担割合=不動産の名義割合としなければなりません。

 

3.名義変更の代わりにローン引継ぎ

「不動産の名義を父から子に変更する代わりに住宅ローンも父から子に引き継ぐことを検討しているが、税金上の問題はないか」

金融機関のご担当者や司法書士の方から実際に受けた質問です。

この質問のように、債務の引継ぎを条件とした贈与のことを負担付贈与と言います。

負担付贈与を行った場合、贈与を受けた側、贈与をした側は、それぞれ以下の課税関係が発生します。

①贈与を受けた側

贈与時点の時価から債務引継ぎ額を差し引いた金額が110万円を超える場合、贈与税の申告・納付を行う必要があります。

贈与時点の時価とは、贈与対象が不動産の場合はその時点の売買時価、不動産以外の場合はその時点の相続税評価額となります。

②贈与をした側

債務引継ぎ額から贈与した資産の取得金額を差し引いた金額は、譲渡所得となり、所得税・住民税の課税対象となります。引き継ぐ債務の金額を対価に資産を譲渡したという考え方に基づくものです。

 

4.隠せない

税務署は、不動産の譲渡・贈与に関する課税漏れを防ぐために、移転登記の情報を定期的に収集しています。安易に保存や移転の登記を行うと、思わぬ課税が生じかねません。登記を行う前には税理士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。(三代川)