坂本会計

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2019.9 税制改正

キャッシュレス・消費者還元事業

1.消費税率10%へ

10月1日より消費税率が10%となる見通しです。消費税増税とタイミングを同じくして、キャッシュレス・消費者還元事業が実施されます。本誌面ではこの事業について解説します。

 

2.キャッシュレスとは

キャッシュレスの主な決済手段は以下の通りです。

①クレジットカード、デビットカード

②電子マネー (例)iD、suica

③QRコード (例)PayPAY、楽天ペイ

国別のキャッシュレス決済比率を比較すると、最も高い韓国は89.1%、中国、アメリカなどは40%以上となっていますが、日本は18.4%にとどまっていて、現金による決済が主となっています。

 

3.なぜ今キャッシュレス

現金決済が主となる場合、販売者側に現金の管理・集計に係るコストが発生します。今後、労働力の減少が見込まれる中、現金の管理・集計という単純作業に貴重な労働力を配置することはなるべく最小限にしたいところです。

また、オリンピックや万博を控え、今後外国人旅行客の来訪件数が増えることが予想されます。普段、キャッシュレス決済を主としている人に対し、現金決済を求めることは販売機会の損失につながりかねません。

以上の点から、国は2025年までにキャッシュレス決済比率を40%とすることを目標としています。
今回実施されるキャッシュレス・消費者還元事業は、消費税増税による消費低迷を防止すると同時に、キャッシュレス決済比率を高めるための施策と言えます。

 

4.事業の内容

キャッシュレス・消費者還元事業の主な取り組みは以下の3点です。

①キャッシュレス決済をした人に対する還元

②キャッシュレス導入店舗へのキャッシュレス決済手数料の補助

③キャッシュレス端末導入費用の補助

 

5.消費者への還元

10月1日から来年6月30日までの間、キャッシュレス決済により買い物をした場合、買い物をした人に対して、決済金額の5%又は2%をポイントとして還元する、又はポイントとして付与する金額分を請求額から差し引く取り組みが実施されます。還元率は、中小・小規模事業者等の店舗で購入した場合5%、それ以外の店舗で購入した場合は2%です。

 

6.キャッシュレス決済手数料の補助

クレジットカード会社などの決済事業者からキャッシュレス決済により商品等を販売した販売者に代金を支払う際、決済手数料が発生します。決済手数料率は3~5%が一般的です。

10月1日から来年6月30日までの間、この決済手数料の3分の1を国が補助することにより決済手数料率は実質2.16%以下となります。メリットを享受するためには、販売者はキャッシュレス・消費者還元事業の加盟店として事前に登録する必要があります。

 

7.導入費用の補助

キャッシュレス決済を導入する際には、決済端末や決済端末の利用に必要な付属機器の購入費用、設置費用、タブレットやスマートフォンの購入費用などの初期費用が発生します。

来年6月30日までの間に発生したキャッシュレス決済導入費用については、国が全額補助をしてくれます。

また、キャッシュレス決済ではありませんが、消費税増税と同時に導入される軽減税率制度への対応として複数税率対応のレジを導入する場合、軽減税率対策補助金を受け取ることができます。軽減税率対策補助金では、国が導入費用の4分の3を補助してくれます。

キャッシュレス・消費者還元事業と軽減税率対策補助金は、どちらか一方のみを適用することしかできません。

 

8.まとめ

5の消費者への還元、6の販売者への還元のメリットを享受するためには、販売者はキャッシュレス・消費者還元事業の加盟店として事前に登録する必要があります。

 

キャッシュレス決済で購入すれば5%の還元を受けられる店舗と何の還元も受けられない店舗とを比較した場合、前者で購入しようという方が多いと思われます。キャッシュレス決済を導入しているお店で、まだ加盟店登録に必要な書類を提出していない方は、早急に提出することをおすすめします。

今回と過去の消費税増税とで大きく異なる点は、増税後のポイント還元の有無です。過去の増税時はポイント還元がなかったため、増税直前の駆け込み購入が目立ちましたが、今回は増税後に購入した方が得をするケースも多いと思われます。

弊社では、お客さまを担当する全スタッフを対象にこの事業に関する社内研修を実施しました。この事業について不明点等がある場合には、ぜひ弊社担当者にご相談下さい。(三代川)