坂本会計

トピックス

2018.5 税制改正

所得拡大促進税制の概要と改正内容

1.所得拡大促進税制の変遷

所得拡大促進税制は、企業の労働分配を促し、個人の所得拡大、消費の活発化を狙いとして、平成

25年度税制改正により導入されました。

平成30年度税制改正により、この所得拡大促進税制が大幅に改正されました。本誌面では、この改正内容

について解説します。

 

2.所得拡大促進税制の概要

所得拡大促進税制とは、青色申告を行う法人が、一定の要件を満たす場合に、当期の給与等支給額から基準年度(平成25年3月期~平成26年2月期)の給与等支給額を差し引いた金額(以下『増加額』と表記)の10%を当期の法人税額から差し引くことができるというものです。

一定の要件とは、以下の①~③全ての要件を満たすことです。

①増加額÷平成25年3月期~平成26年2月期の給与等支給額が3%以上であること

②当期の給与等支給額が前期の給与等支給額以上であること

③当期の1人当たりに対する平均給与等支給額が前期の1人当たりに対する平均給与等支給額を超えていること

※①~③の給与等支給額には、実際はさらに細かい要件がありますが、本誌面ではイメージを伝えることを優先しているため簡便化した表記としています。

要件の特徴となっているのは、平成25年3月期~平成26年2月期の給与等支給額を基準としている点です。

 

3.改正内容

平成30年度税制改正により改正された点は以下の①~③の3点です。

①法人税額から控除する割合

これまでは増加額の10%とされてきましたが、今回の改正により、当期の給与等支給金額から前期の給与等支給金額を差し引いた金額の15%を控除できることとなりました。10%から15%に上昇しています。

②適用要件

これまで判定対象とされてきた平成25年3月期~平成26年2月期の給与等支給額の金額が、今回の改正により、判定対象から除外されることとなりました。

今後は、以下の1要件のみを満たせば、所得拡大促進税制を適用することができます。

(当期の1人当たりに対する平均給与等支給額-前期の1人当たりに対する平均給与等支給額)÷前期の1人当たりに対する平均給与等支給額が

1.5%以上であること

③事業開始年度は対象外に

これまでは、事業開始年度は必ず適用することができましたが、今回の改正により事業開始年度は適用対象から除外することとなりました。

 

4.有力な決算対策

決算前に当期と前期の給与等支給額を比較し、給与等支給額をもう少し増やせば所得拡大促進税制を適用することができる場合に、決算賞与を支給すると、決算賞与の支給による経費増加と所得拡大促進税制適用による法人税額の減少という2つのメリットを享受することができます。決算対策の1手段としてぜひご検討下さい。(三代川)