坂本会計

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2021.8 税制改正

生前贈与が相続税対策にならなくなるかも?

1.2つの計算方法

贈与税の計算方法は2つあります。1つは『暦年課税』、もう1つは『相続時精算課税』です。

 

2.110万円=暦年課税

暦年課税を選択した場合、贈与税の額は以下の算式により計算します。

贈与税額=(その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額の合計額-110万円)×税率

以下は令和3年中に200万円の贈与を受けた場合の例です。

(200万円-110万円)×10%=贈与税額9万円

暦年課税を選択した場合は、1年間に110万円以内であれば、贈与を受けても贈与税は生じません。

また、適用する税率はその年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額の合計額から110万円を差し引いた後の金額がいくらかによって決まります。この金額が大きくなるほど、税率も高くなります。

税率は2種類あり、贈与をした人と贈与を受けた人の関係性によってどちらの税率を適用するかが決まります。1種類は直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳以上の者(子や孫など)への贈与の場合、もう1種類はこれ以外の贈与の場合です。前者の方が税率は低くなっています。

 

3.2,500万円=相続時精算課税

相続時精算課税を選択した場合、贈与税の額は以下の算式により計算します。

贈与税額=(その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額の合計額-2,500万円(※))×20%

(※)前年以前に、この相続時精算課税を活用して贈与税の申告をしている場合、2,500万円から前年以前贈与を受けた金額の合計額を差し引きます。

以下は同じ人から令和2年に2,000万円、令和3年に1,500万円の贈与を受けた場合の例です。

(1,500万円-(2,500万円-2,000万円))×20%=贈与税額200万円

相続時精算課税を選択した場合は、同じ人から贈与を受けた金額の合計額が2,500万円以内であれば、贈与税は生じません。

また、2,500万円を超えた部分については、一律20%の税率を乗じて、贈与税額を計算します。

 

4.生前贈与が節税にならない?

昨年12月に発表された令和3年度税制改正大綱にて「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」という文章が公表されました。

この文章が意味するところは、広く実施されている生前贈与による相続税の節税を防止しようということではないかと言われています。

もし、税制改正が実施されるとしたら最短でも令和4年又は令和5年からで、過去に遡及して適用されることはないと言われています。ただ、これから生前贈与により相続税対策を実施しようと考えていた人は影響を大きく受けることになります。

今年の年末又は来年早々に公表される令和4年度税制改正大綱において、より具体的な方向性が示される可能性があります。その際には改めて情報を発信しようと考えています。(三代川)

 

※参考文献『週刊東洋経済2021年7月31日号」