貸付用不動産の評価方法の見直し
1.相続税対策に利用されている
市場価格と相続税評価額との乖離を利用して相続税額を圧縮しているケースが多く見受けられています。
例えば、財産を多く所有している方が賃貸用マンション1棟を4億円でキャッシュで購入し、購入の4年後に亡くなったとします。もし、賃貸用マンションを購入しなかった場合、キャッシュ4億円が相続財産に含まれることとなります。先述の通りに購入すると、キャッシュ4億円が土地建物に代わります。土地建物の相続税評価額は、市場価格より大幅に低くなりやすく、キャッシュ4億円を所有しているよりも相続税額は低くなります。
さらに、キャッシュではなく金融機関からの借入を原資に購入した場合は、相続発生日時点の借入残高を債務控除という形で相続財産から控除することができます。
2.令和8年度税制改正による見直し
昨年12月に公表された税制改正大綱において、1で述べたしくみを見直す旨が明記されました。
3.相続直前に取得した不動産の評価
これまでは取得時期にかかわらず、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をベースに相続税評価額を算出していました。
これが令和9年1月1日以降に相続・贈与により取得する貸付用不動産のうち、前所有者(被相続人又は贈与者)が相続・贈与の日前5年以内に取得したものは、相続・贈与の日時点の通常の取引価額に相当する金額を相続税評価額とすることとなります。
通常の取引価額は原則として被相続人又は贈与者が取得に要した金額(以下「取得価額」)を基に計算しますが、取得時から相続・贈与までの地価変動等を加味して、取得価額の80%としても良いとされています。
4.小口化された貸付用不動産の評価
商品として小口化された貸付用不動産についてもこれまでは土地は路線価、建物は固定資産税評価額をベースに相続税評価額を算出していました。
これが令和9年1月1日以降に相続・贈与により取得するものより、通常の取引価額に相当する金額を相続税評価額とすることとなりました。
通常の取引価額は以下の①~③のいずれかによるものとし、いずれにも該当しない場合は、3で解説した方法により計算した金額となります。
①出資者の照会等により、販売会社等から提示される適正な処分・買取価格等
②販売会社等が把握している適正な売買実例価額
③定期報告書等に記載された不動産の価格等
改正案は、取得時期に関係なく全ての小口化商品に適用されます。
5.相続税対策
賃貸不動産=相続税対策になるというイメージは広く浸透しています。しかしながら、今後は賃貸不動産だからといって相続税対策にあまり寄与しないケースもあると思われます。
相続税対策を検討する場合には、今回の見直しを加味して何を実施するかを検討しましょう。(三代川)