坂本会計

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2018.6 法人

役員に対しても決算賞与?事前確定届出給与

1.役員報酬の支給方法

中小企業において、役員に対して報酬を支払う方法は、2種類あります。

1つは定期同額給与、毎月所定の時期に、同額を支給する方法です。

もう1つは事前確定届出給与、いわゆる賞与として支給する方法です。本誌面では事前確定届出給与について解説します。

 

2.事前確定届出給与の定義

事前確定届出給与とは、年度当初に各役員に対する賞与支給の金額と時期を株主総会で決議し、決議内容を税務署に届け出て、届け出た内容通りに賞与支給を行う方法のことです。

税務署への届出に使用するのが、『事前確定届出給与に関する届出書(以下『届出書』と記載)という書類です。この届出書には、誰に対して、いつ、いくらを支給するかを記載する必要があります。

この届出書は、中小企業の場合は、定時株主総会の日から1ヶ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。つまり、年度開始からおおむね3ヶ月以内に提出する必要があります。

 

3.届出せずに賞与を支払ったら?

届出書を提出していないのに、役員に対して賞与を支払った場合、支払った金額は、法人税を計算する際に、損金の額に算入することはできません。損金の額に算入できないということは、賞与を支払って手元にお金が残っていない部分についても法人税が課税されることになります。さらに賞与を受け取った役員に対しては、所得税・住民税が課税されます。

つまり、法人・個人両者に対して課税されることとこととなり、税負担は非常に大きくなります。そのため、届出書を提出せずに賞与を支給するのは極力避けたいところです。

 

4.決算賞与としての活用方法

多額の利益が生じた場合に、決算日直前に従業員に対して賞与を支給することがあります。いわゆる決算賞与です。事前確定届出給与を活用すれば、役員に対しても賞与を支給することが可能です。

2で解説した流れの通り、年度当初に、賞与支給の時期と金額を決定し、所轄の税務署に届出書を提出します。賞与支給の時期は年1回のみ、決算月のいずれかの日とします。

決算日直前の試算表で、賞与を支給しても問題がないぐらい利益が出ていれば、届出通りに役員に対して賞与を支給します。もし、賞与を支給してしまうと赤字になりそうな場合、役員に対して賞与は1円も支給しません。

1円も支給しないということは、税務署に提出した届出書とは異なる内容になりますが、支給していないということは経費処理した金額が存在せず、賞与を支払ったのに、損金の額に算入することができない金額は発生しません。

 

5.一部の金額を支払ったら?

4の方法で、届け出た金額よりも少ない金額を支払った場合は、損金の額に算入することができず、3で解説した通り、法人・個人両者に対して課税されます。

決算賞与での活用は、適切に活用すれば法人税の節税になりますが、方法を誤ると法人・個人両者への課税という大きな負担につながります。実行前に慎重に検討する必要があります。(三代川)