坂本会計

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2017.10 法人

法人税における賞与の取り扱い

1.役員への賞与支給は不可?

長い間、会社経営をされている方とお話した際に、「役員には賞与を払えないんでしょ」「役員に賞与を払っても経費にならないんでしょ」と言われたことがあります。

現在の法人税法では、一定の要件を満たせば、役員に対する賞与支給額を経費に含めることができます。

本誌面では、役員、従業員への賞与に関する法人税法上の取り扱いを解説いたします。

 

2.役員給与の種類

法人税法上、経費に含めることができる役員給与は以下の2つです。

①定期同額給与

②事前確定届出給与

①は、いわゆる毎月支給される給与のことです。支給時期が毎月一定で、かつ、その事業年度の各支給時期における支給額が同額である場合、この定期同額給与に該当し、経費に含めることができます。

②は、賞与に相当するものです。

各役員に対して、この時期に、この金額の賞与を支払う予定ですという届出書を税務署に提出し、届出内容通りに支給すれば、支給額を経費に含めることができます。

この届出書には提出期限があります。大雑把な表現をすると、事業年度が開始してから3ヶ月以内に税務署に提出をしなければ、事前確定届出給与に該当する賞与支給を行うことはできません。

つまり、事業年度の後半になって、予想外に利益が多くなりそうなので、役員に賞与を支払うことで利益を調整しようということは認めまれません。

 

3.従業員賞与の原則的な取り扱い

一方、従業員に対して支払う賞与については、あらかじめ税務署に届け出る必要はなく、賞与の支給をした日において、支給した金額を経費に含めることができます。

事業年度の後半になって、予想外に利益が多くなりそうなので、従業員に対して決算賞与を支給することで従業員の貢献に感謝し、かつ法人税を減額しようとという考えは、法人税法上認められています。

 

4.賞与の未払金計上

ただし、従業員への賞与が経費として認められないケースがあります。

代表的なケースは、決算書上、従業員賞与を未払金として経理し、賞与の支給を翌期に実施するケースです。この場合は、次の要件を満たさないと、未払金として経理した事業年度においては賞与を経費に含めることができず、実際に支給した翌年度の経費となります。

①支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受ける全ての従業員に対して、その事業年度内に通知していること

②①で通知した金額を、通知した全ての従業員に対して通知した日の属する事業年度終了の日の翌月から1ヶ月以内に支給すること

経費に含めることができる時期が後ろにずれることで、資金繰りにも大きな影響が生じます。決算直前になって、決算賞与の支給を検討する場合、経費に含めるための要件等を確認した上で、支給しましょう。