医療費控除の概要
1.所得税額を確定させる手続き
各人の所得税額を確定させる手続きは、2つあります。
1つは、12月から1月にかけて、勤務先が主体となって実施する年末調整です。勤務先が年末調整を実施すると、源泉徴収票が発行されます。
もう1つは、2月16日から3月15日にかけて、各人が主体となって実施する確定申告です。各人が税務署に確定申告書を提出することにより実施されます。
医療費控除は、後者の確定申告でしか適用することができません。
本誌面では、医療費控除について解説します。
2.概要
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときに受けることができる所得控除のことです。
3.控除の対象となる医療費の範囲
①自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
②その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
医療費控除の対象となるのは、上記①、②の両方を満たすものとなります。自分のものだけでなく、自分と家計が同一の親族の医療費も対象となります。同居していなくても、家計が同一であれば、控除の対象となります。
また、控除の対象となるものは、診察又は治療の対価として支払ったものです。以下の費用については、医療費控除の対象外です。
・入院時に支払った差額ベッド代で、医師からの指示に基づかないもの
・インフルエンザ予防接種の代金
・診断書発行代金
4.控除額の計算方法
医療費控除により、所得から差し引かれる金額は次の算式により計算します。
医療費の合計額-10万円(※)-保険金等の額
(※)総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%の金額
高額療養費として還付される金額や医療保険を契約している場合に支払われる入院保険は、医療費の合計額から差し引く必要があります。
5.5年間さかのぼって適用可能
確定申告の必要がない方の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。つまり、平成27年以降の各年の医療費の合計額が10万円を超えていたのに確定申告をしていなかった場合、今からでも確定申告を行うことで医療費控除を適用することができます。
控除の対象となる医療費の範囲を誤って解釈していた等の理由で、医療費控除を適用していなかった方は、今からでも過年分の確定申告を行ってみてはいかがでしょうか?(三代川)