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2018.10 個人

相続が変わる 配偶者居住権の新設

1.38年ぶりの改正

相続に関する民法の内容を平成31年以降、順次改正することが決定しました。相続に関する民法の改正は昭和55年以来、約40年ぶりです。

 

2.多くの人に影響を及ぼす項目

特に多くの人に影響を及ぼす今回の改正内容は以下の2つです。

①配偶者居住権の新設

②自筆証書遺言の形式と保管方法の見直し

本誌面では、①配偶者居住権の新設について、詳しく解説します。

 

3.自宅を売却しなければならない?

相続財産の内訳でよく見受けられるケースは、自宅の土地建物、預金、生命保険、その他少額の資産というものです。

(事例)

・被相続人(亡くなった方)=父

・相続人(相続財産を取得する人)=母、子2人

・相続財産=自宅の土地建物(評価額3,200万円)、預金800万円、合計4,000万円

母が相続財産全てを取得したとします。子2人が自分の取り分がないことに異議を申し立てないのであれば問題はありません。

子2人が、最低限の取り分(=遺留分)は取得したいと主張した場合、母は、子2人に対して500万円ずつ、合計1,000万円を渡さなければなりませんが、預金は800万円しかありません。相続財産に生命保険金がある場合は、保険金を原資に残り200万円を捻出することが できますが、ない場合は資金を捻出するために自宅を売却しなければなりません。

 

4.配偶者居住権とは

3の事例において、妻が高齢の場合、住み慣れた自宅を売却して新たな場所で生活を始めるのは大変な負担です。これを回避するために新設されたのが配偶者居住権です。

配偶者居住権とは、相続発生時に被相続人が所有していた自宅に配偶者が住んでいる場合には、その配偶者は自身が亡くなるまでの間、自宅に無償で住み続けることができるという権利のことです。

配偶者居住権が生じる場合には、相続時の自宅に関する権利は、所有権と居住権とに分かれることになりました。

遺産分割協議の結果、自宅の居住権は母が、所有権は子が相続したとします。子が金銭に困って自宅を第三者に売却しても、母が持つ居住権は失われず、母は引き続き自宅に住み続けることができます。

 

5.配偶者居住権の評価方法は?

配偶者居住権が発生する場合、自宅については、所有権と居住権とに分けて評価することとなります。所有権しかない場合の評価額が4,000万円の自宅の場合、4,000万円を所有権と居住権とで分けて、評価することになります。

配偶者居住権の評価額は、配偶者居住権がない場合の評価額をベースに、相続発生時の配偶者の平均余命などを勘案して計算することとなりそうです。(三代川)