坂本会計

トピックス

2013.3 個人

個人にも法人にも課税される?みなし譲渡

1.中小零細企業の株主構成

多くの中小零細企業では、社長及びその親族が発行済株式の全部を所有しています。そのため、株主と法人との間での資産の移動や賃貸借等が大企業に比べると多く見受けられます。
税金の計算上は、資産の移動に際して血縁関係のない第三者と同様の条件で取引をしていれば、後々トラブルにつながる可能性は低いのですが、先述のように親族が全株式を所有している場合、第三者との間では成立し得ない条件で資産の移動を行っていることがあります。

2.無償で法人に資産を移転?

社長が株式を100%所有している法人があったとします。この法人は、長年にわたり業績が好調で、社長は多額の役員報酬を受け取り、多くの個人資産を築きました。しかし、近年、経営環境の変化に上手く対応できず、法人は数年続けて巨額の赤字を計上してしまいました。社長は法人の財務内容の悪化を受け、バブル以前から個人で所有している土地を法人に贈与しました。この土地の上に法人名義のビルを建設し、他者に賃貸することで、本業の赤字をカバーしようという狙いです。

3.二重に課税される?

2のケースでは、贈与を受けた法人と贈与をした社長のいずれにも税金がかかることになります。
まず法人は、無償により譲り受けた土地の時価相当額を受贈益(特別利益の部)として計上することになり、この部分に法人税が課税されます。
一方個人に対しては、法人に対して土地の譲渡をしたものとみなされ、譲渡所得がかかります。
この場合の譲渡所得は、『(時価相当額-社長が土地)により計算します。

4.みなし譲渡

事例のように、贈与や著しく低い金額等により個人から法人に資産を移転する行為のことをみなし譲渡と言います。
このみなし譲渡を行った場合、3に記載した通り、法人と個人の両方に課税される可能性があります。金銭を受け取っていない個人が課税されることについて違和感を感じるかもしれませんが、『資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する』ことを趣旨として、このような取り扱いが設けられています。

5.平成25年度税制改正

平成25年度税制改正により、法人の取締役等で法人の保証人であるものが、一定の要件を満たす個人所有の資産を、法人に係る合理的な再生計画に基づき、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に法人に贈与した場合には、この贈与については、みなし譲渡課税は適用されないことなりました。いわゆる金融円滑化法が今月末をもって終了することにより、中小企業の倒産の増加が懸念されていることへの対策のようです。
(参考文献)
・大蔵財務協会『平成24年度版図解譲渡所得』
・ぎょうせい『平成25年度税制改正図解要点チェック』