マイホーム売却損の特例
1.原則的な取り扱い
土地・建物を売却した場合、給与や不動産などの
所得とは分けて所得を計算し、計算した所得に所有
期間に応じた税率を乗じて、所得税・住民税を計算
します。
売却金額が土地・建物の取得費・譲渡に係る費用
を下回る、いわゆる売却損が発生した場合、売却に
伴う所得税・住民税の納税は発生しません。
また、売却損の金額は給与や不動産などの所得と
は相殺されず、損失の額は切捨てとなります。
2.マイホーム売却損の特例
ところが、一定の要件を満たす場合に限り、マイ
ホームの売却損の金額を給与や不動産などの所得と
相殺することができる特例が存在します。その特例
は以下の2つです。
①特定居住用財産の特例
②居住用財産の買い替え等の特例
3.特例の要件
マイホーム売却損の特例を適用するためには決め
られた要件を満たす必要があります。
2つの制度に共通する要件は以下の5つです。
①売却したマイホームを所有していた期間が、売却し
た年の1月1日時点で5年を超えていること。
②売却先が、配偶者などの特殊関係者でないこと。
③売却した年の前年、前々年にマイホーム売却に係る
各種特例の制度を適用していないこと。
④マイホームを売却したことにより、売却損が生じて
いること。
⑤期限内に確定申告を行うこと。
4.特定居住用財産の特例
3の要件を全て満たしていて、かつ、売買契約の前日
時点において、売却した不動産を購入するために契約
した住宅ローン(※)が残っている場合、売却損の金
額を給与や不動産などの所得と相殺することができ
ます。さらに、相殺しきれずに売却損が残った場合、
残った金額を3年間繰り越すことができます。
相殺の対象となる売却損の金額は、以下の金額が
限度額となります。
売買契約の前日時点の住宅ローン残高-売却金額
つまり、売却により得た金額によって住宅ローンを
完済できる場合は、特例の対象外となります。
(※)返済期間が10年以上残っている場合に限る
5.居住用財産の買い替え等の特例
売却損を給与や不動産などの所得と相殺することが
でき、相殺しきれなかった金額を3年間繰り越すこと
ができるという特例の内容は4の特定居住用財産と
同じです。
異なるのは適用を受けるための要件です。3の要件を
全て満たした上で、床面積50㎡以上の新しいマイホ
ームを住宅ローンを契約して購入することが要件となり
ます。4と異なり、売買契約の前日において住宅ローン
を全て返済していても適用の対象となります。
6.特例の活用漏れを防ぐために
不動産の売却損は、他の所得と相殺できないと考えて
いる方が多いと思いますが、この紙面で解説したような
特例が存在します。売却損の活用漏れを防ぐために、
マイホームを売却した方は、ぜひ弊社担当者まで
ご相談下さい。