坂本会計

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2023.4 税制改正

インボイス制度 免税事業者関係の経過措置

1.免税事業者との取引に影響

今年10月1日より開始となるインボイス制度。このインボイス制度が始まることで影響が生じるのが、取引をする者のいずれかが消費税を納めていない事業者(以下免税事業者と表記)であるケースです。今回は、免税事業者を対象に導入されるインボイス制度に関する経過措置について解説します。

 

2.免税事業者への支払に関する経過措置

インボイス制度がスタートすると、免税事業者に支払った経費については、消費税の計算上、仕入税額控除を適用することができないこととなり、これまでと比べ、決算時に支払う消費税額の負担が大きくなってしまいます。

インボイス制度開始と同時に、免税事業者への支払について一切仕入税額控除を認めないとすることで急激に税負担が増えてしまう事業者が生じることに配慮し、令和11年9月30日までの期間、次の経過措置が設けられることとなりました。

①令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間に免税事業者に支払った経費

課税仕入れ等に係る税額の80%の金額について仕入税額控除を適用することが可能

②令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間に免税事業者に支払った経費

課税仕入れ等に係る税額の50%の金額について仕入税額控除を適用することが可能

インボイス制度開始から6年経過後の令和11年10月1日以降は、免税事業者に支払った経費については、一切仕入税額控除を適用することができなくなります。

 

3.免税事業者→課税事業者となった場合の経過措置

免税事業者を維持することで取引先の消費税負担が増え、それを嫌悪した取引先から取引を打ち切られたり、取引条件の見直しを求められることを防止するために、インボイス制度開始後はあえて消費税の納税義務者となることを選択する事業者がいます。そのような事業者の税負担が急激に増えることを防止するために、インボイス制度がなければ免税事業者を維持していたであろう事業者が課税事業者となった場合、課税事業者となってから3年間の消費税額については、売上に係る消費税額の2割にとどめる経過措置が設けられました。

消費税額は、原則的には売上に係る消費税額と経費に係る消費税額との差額を支払うことになります。そのため、売上・経費いずれについても実際にどのぐらいの金額の消費税額を負担しているかを集計する必要があります。

この経過措置は売上に係る消費税額から消費税額を計算するため、経費に係る消費税額を集計する必要がなく、原則的な方法による場合と比べ、事務負担が軽く済みます。

 

4.消費税の計算は複雑に

インボイス制度がスタートすることで、消費税の計算はこれまで以上に複雑なものとなります。今回紹介した経過措置やその他の特例を適用しないことで、本来はしなくても良い税負担をしなければならなくなってしまいます。そのような状況に陥らないようにするために、対応を検討しましょう。(三代川)