坂本会計

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2019.4 税制改正

生命保険の経理処理が大幅に変わります

1.生命保険には節税効果がある?

生命保険は、死亡や疾病などの時でも資金に困らないように加入するものですが、このような目的とは別に、節税を目的として活用されることもあります。

 

2.生命保険の節税効果

死亡時に保険金が支払われる生命保険には、死亡を待たずに保険契約を解約した場合に、解約返戻金が支払われるものと支払われないものとがあります。節税に用いられることが多いのは、法人が解約返戻金のある定期保険に加入する場合です。

(例)契約者:法人  被保険者:社長(40歳)

契約の満期:95歳

種類:長期平準定期保険

月額保険料:60,000円

このような定期保険に加入した場合、法人が毎月支払う保険料は、半額の30,000円を経費として、残額の30,000円を資産として経理します。

保険に加入している期間が長くなるにつれて、解約返戻金の金額が増加します。数十年後に保険契約を解約すると、法人に多額の解約返戻金が入金されます。解約返戻金が入金されることで法人は多額の利益を計上することとなりますが、入金直後に社長に対して退職金を支払うと、利益を計上する期と同じ期に多額の費用も計上されます。

保険料の支払時に経費処理し、解約時に利益と費用とを相殺することで、法人税額を節税しながら財産形成するいうのが、よく用いられる生命保険を利用した節税の手法です。

 

3.近年ブームの全損保険

近年、ブームとなっていたのが、いわゆる全損保険です。

2の例で、保険料支払時は保険料の半額を経費、残額を資産として経理すると記載しましたが、全損保険の場合、多額の解約返戻金があるにもかかわらず保険料の全額を経費として処理することができました。

法人税を節約したい法人と保険契約数を増やしたい保険会社のニーズが合致し、全損保険に加入する法人が近年急増していました。

 

4.経費となる額が少なくなります

国税庁は生命保険を利用した節税に歯止めをかけるために、生命保険料の経理処理ルールの見直しを表明しました。以下はピーク時の解約返戻率と保険料のうち経費に算入できる割合を記載しています。今後はこの基準に基づいて保険料の経理処理を行うこととなります。

①85%超

契約~10年間  100%-ピーク時返戻率×0.9

11年目以降  100%-ピーク時返戻率×0.7

②70%超85%以下  5分の2

③50%超70%以下  5分の3

④50%以下  全額

 

5.既に契約している保険は?

4のルールが適用されるのは、今後契約する保険契約です。既に契約している保険はこれまで適用していた経理処理を継続することが認められます。4のルールの適用開始時期は、6月中となる見通しです。(三代川)