坂本会計

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2014.8 法人

節税対策で使う?短期前払費用の特例

1.費用処理の原則
決算書は一定のルールに則って作成する必要があります。損益計算書の作成にあたり、経費として処理するためには、決算日の時点において、以下の3つの要件を全て満たしている必要があります。
①債務が成立していること。
②債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
③債務の金額を合理的に計算できること。

 

2.前払いの原則的な取扱い
3月決算の法人が、3月下旬に4月から翌年3月までの1年分の事務所家賃を前払いしたとします。このケースを上記1で触れた3つの要件に当てはめてみます。
法人は、事務所の貸主との間で賃貸借期間とその期間の賃料について契約又は合意をした上で、この支払を行っていると想定されます。よって、契約=債務の成立、賃料が算定できる=債務の金額を計算できるため、①と③は満たしていると判断されます。

一方で、決算日の時点では賃貸借期間はまだ到来してお らず、給付原因となる事実は発生していません。よって、②は満たしていないことから、支払った賃料を今期の経費に含めることはできず、支払った賃料は前払費用として処理し、給付原因が生じた時点、つまり翌期の経費として取り扱います。

 

3.1年分を経費にできる?
2で触れたように、まだサービスの提供を受けていないものについて代金を前払いした場合、原則的には経費処理をせずに資産計上することとなりますが、2のケースであっても、支払った日の属する期において、支払金額の全額を経費処理する方法があります。それが『短期前払費用の特例』です。

 

4.短期前払費用の特例とは
短期前払費用の特例とは、前払費用であっても、支払の対象となるサービスの提供を支払日から1年以内に受ける契約を結んでいて、かつ支払った日において支払金額の全 額を経費処理する方法を継続的に採用している場合には、支払った日の属する期において支払金額の全額を経費として認めるというものです。

 

5.短期前払費用の活用方法

短期前払費用は、決算月において節税対策を行う場合によく用いられます。例えば、決算月に1年分の生命保険料や自動車保険料を前払いした場合です。経費として認められるのは、原則的には1ヶ月分相当額ですが、この特例を使 うことにより、1年分の保険料を今期の経費として取り扱うことができます。
保険料以外にも、家賃や利息なども、この特例の対象となります。

 

6.留意点

この特例の対象となるのは、1年以内に提供を受けるサービスの代金を支払った場合です。1年分の雑誌の購読料のようにモノの購入に係る代金を支払った場合は、この特例の対象外で、支払った金額は今期の経費とはなりません。
また、2年分をまとめて支払った場合は、1年以内にサービスの提供を受ける部分についても、支払日の時点では経費として取り扱うことができません。
節税対策をしたつもりが、節税にはならず、支払だけが先行してしまうケースがあるので、ご注意下さい。