坂本会計

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2024.4 法人

使用人兼務役員になれない役員の範囲

1.使用人分給与が役員給与に

幹部社員を取締役に昇格させ、この幹部に対して取締役分と従業員分両方の給与を支払っているケースを見かけることがあります。しかし、従業員分として支払った給与について、税務調査の場にて取締役分としての支払とみなされてしまうケースがあります。今回は、税務上における使用人兼務役員の定義と注意点について、解説します。

 

2.使用人兼務役員の定義

使用人兼務役員とは、以下の2つの両方を満たす役員です。

①部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有している

②常時使用人としての職務に従事している

つまり、肩書きを持たないいわゆるヒラ社員がそのままの状態で取締役に就任した場合は、職制上の地位を有しないため、使用人兼務役員とはならないこととなります。

 

3.使用人兼務役員になれない役員

役員であっても、次のいずれかに該当する人は税務上、使用人兼務役員になることができません。

①代表取締役、代表理事、清算人

②副社長、専務、常務

③合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員

④会計参与、監査役、監事

⑤同族会社の役員のうち、株式所有割合が次のア~イ全てを満たしている

ア その役員及びその役員の親族が所有している持株の割合が10%を超えていること

イ その役員が所有している持株の割合が5%を超えていること

(※)イメージをお伝えすることを重視しており⑤については、かなり大雑把な表現を用いています。

また、同族会社の使用人のうち、税務上みなし役員とされる人についても使用人兼務役員として取り扱うことはできません。

 

4.使用人兼務役員と認められないとどうなる?

3のうち②のケースを見かけることがあります。社内で専務、常務として位置付けている人を使用人兼務役員としているケースです。先述の通り、専務や常務は使用人兼務役員として取り扱うことはできず、専務や常務に対して支払う給与は全額が役員報酬となります。

もし、取締役分と従業員分両方の給与を支払っていて、かつ従業員分については残業代や歩合給を付していた人に対する給与の全額が役員報酬とみなされた場合、毎月一定額を支給するという定期同額給与の要件を満たさないため、その人に対する役員報酬の一部は、法人税の計算上、損金不算入となってしまいます。その他にもその人に対する役員報酬の一部は過大だとして、損金不算入額が発生してしまうケースがあります。このような状況を回避するために、使用人兼務役員制度を導入しよう、導入しているという会社は、税務上問題がないかを顧問税理士に確認しましょう。(三代川)