坂本会計

トピックス

2020.6 法人

前期に支払った税金が還付される 繰戻し還付

1.多くの企業の業績が悪化

新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」と表記)の影響で、多くの企業の業績が悪化しています。

前期は業績が好調で、多額の税金を支払ったのに今期は赤字という会社は少なくないと思われます。本紙面では、そのような会社が検討すべき制度である「欠損金の繰戻し還付」について解説します。

 

2.制度の概要

欠損金の繰戻し還付とは、前期は黒字で法人税を支払った法人が当期は赤字となった場合に、前期に支払った法人税額のうち、当期の赤字の金額に対応する部分について還付を受けられるという制度です。

還付金額は、次の算式により計算します。

還付金額=前期の法人税額×当期の赤字の金額÷前期の黒字の金額

 

3.事例

前期の黒字金額が1,000万円の場合、前期の法人税額は1,737,200円です。この法人の当期の業績が800万円の赤字の場合、欠損金の繰戻し還付により受け取れる還付金額は、以下の金額となります。

前期の法人税額(1,737,200円)×当期の赤字の金額(800万円)÷前期の黒字の金額(1,000万円)=1,389,700円(※資本金1億円以下の場合)

もし、当期の赤字の金額が前期の黒字の金額よりも多かった場合、前期に支払った法人税額は全額が還付されることとなります。

 

4.適用するための要件

欠損金の繰戻し還付制度は、全ての法人が適用することができるわけではありません。適用するためには以下の要件を満たす必要があります。

①前期も当期も青色申告により法人税の申告書を提出していること

②当期の法人税の申告書を申告期限までに提出していること

③当期の法人税の申告書と一緒に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること

 

5.税務調査に来る?

メリットしかないように見える欠損金の繰戻し還付ですが、法的根拠は何もなく噂に過ぎない内容ではあるものの、この制度を適用した法人には税務調査が実施されやすいと言われています。欠損金の繰戻し還付を適用した私たちのお客さまに対しても全件ではありませんが税務調査が実施されています。

 

6.繰戻し還付を適用しなかったら

繰戻し還付を適用しなかった場合、当期に生じた赤字は、翌期以降に繰り越され、翌期以降の黒字の金額と相殺することができます。赤字を繰り越すことができる期間は10年間です。

前期の納税額が多く、資金繰りに困っている法人は欠損金の繰戻し還付を適用した方が良いと考えます。

前期の納税額が少ない、翌期以降黒字となりそう、税務調査が気になる法人は、欠損金の繰戻し還付を使わずに翌期以降の黒字と相殺しても良いのではないでしょうか。(三代川)