坂本会計

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2019.6 法人

税務調査事例集

1.税務調査への立会い

税理士の業務の1つとして、お客さまに対して実施される税務調査への同席というものがあります。本誌面では、これまでに同席した税務調査の中で、傾向を読み取ることができる調査について解説します。

 

2.赤字だから税務調査がないは誤り

(事例1)法人で運営している飲食店への調査

このお客さまは、法人を設立してから30年近くが経過し、同一商圏内に飲食店が増加したこともあり、年間の売上高は1,000万円前後と、ピーク時と比べると大きく減少していました。役員報酬は数万円で、それでもほとんどの年が赤字という年度が続いていました。売上や利益の額などを鑑みると、税務調査の対象先には選定されにくいと考えられる法人です。

税務署の統括官から弊社に対し、このお客さまに対して、意見聴取を実施したいと連絡がありました。

弊社の税理士と担当者が、税務署に足を運び、意見聴取が実施されました。税理士から統括官に対して、「業績を見る限り、税務調査対象として選定されることが少ないお客さまに対して、なぜ税務調査を行うことになったのか」と質問をしたところ、統括官の回答は「この業績で生活することは困難であり、税務署に報告されている売上の数値が誤っている可能性があると考え、調査対象とした」というものでした。

意見聴取の結果、売上に誤りがある可能性は低いと判断され、税務署の調査官がお客さまを訪問して資料などを確認する実地調査は行わないことになりました。

一般的に、赤字の会社は税務調査の対象とされにくいと言われていますが、この事例から、赤字の会社、業績が低迷している会社に対しても税務調査が行われることはあるということがわかります。

 

3.繰戻し還付を適用すると税務調査?

(事例2)繰戻し還付を適用した法人への調査

法人税には繰戻し還付という制度があります。 この制度は、前期が黒字で法人税を納税し、当期は赤字となった場合に、申請をすることで前期に納税した法人税について還付を請求できるという制度です。繰戻し還付を適用するか、適用せずに次年度以降に赤字を繰り越すかは選択することができます。

弊社の過去の税務調査立会い実績を見ると、繰戻し還付を適用した法人に対しては意見聴取、税務調査が行われやすいという傾向が見受けられます。検索サイトにて「繰戻し還付 税務調査」と検索すると、同様のことを述べているホームページが多数表示されます。法的根拠があるわけではないですが、繰戻し還付の適用を検討する際には税務調査がされると考えた方が良いかもしれません。

 

4.赤字の会社も対象となる

税務調査は、利益の金額が大きい会社に対して実施されると考えている方が多いようですが、今回取り上げた事例から、赤字の会社に対しても税務調査は実施されることがあることを認識していただけると幸いです。(三代川)