坂本会計

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2020.5 法人

新型コロナにより業績が悪化した場合に実施する役員報酬減額の取扱い

1.多くの企業の業績が悪化

新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」と表記)の影響で、多くの企業の業績が悪化しています。

役員報酬は、事業年度開始から3ヶ月以内に毎月の支給額を決定し、その事業年度中は支給額を変更してはならない、変更した場合は支給額の一部が経費から除外されるとされています。

新型コロナの影響で業績が悪化したことを受けて、支給額を見直した場合でも冒頭の通りに取り扱わなければならないのか、解説します。

 

2.4月13日発表の質疑応答事例

国税庁は、4月13日に以下の2つの質疑応答を発表しました。

①業績が悪化した場合に行う役員給与の減額

②業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額

①と②の違いは、①は業績悪化が顕在化しているのに対し、②は現時点では業績悪化が顕在化していないものの、今後顕在化する可能性が高いという点です。

 

3.業績が悪化した場合の減額

法人税施行令第69条1項では、「その法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定は定期同額給与に該当する=改定前・改定後いずれの支給額も全額を経費に含めて良い」と定められています。

ただし、著しく悪化したことの範囲は個々の実態に即して判断することとされていて、一時的な資金繰りの都合や目標未達などは、著しく悪化したことには含まれないとされています。

新型コロナの影響により、多くの企業が家賃や給与の支払をこれまで通りにはできない状況下にあります。そのような状況下で実施される役員報酬の支給額の見直しは、経営の状況が著しく悪化したことにより行われたものであるため、改定前・改定後いずれの支給額についても、全額を経費に含めて良いこととされています。

 

4.業績悪化が見込まれる場合の減額

新型コロナが収束しない限りはこれまで通りに営業することができない、これまでと同水準の集客が見込めない場合、現時点では業績が悪化していないとしても、今後急激に業績が悪化する可能性が高いと考えられます。このような状況下で実施される役員報酬の支給額の見直しは、経営の状況が著しく悪化したことにより行われたものであるため、改定前・改定後いずれの支給額についても、全額を経費に含めて良いこととされています。

 

5.新型コロナ収束後に支給額を改定した場合

では、新型コロナが収束した後、役員報酬の支給額を減額前の金額に戻した場合は、どのように取り扱うのでしょうか。

この点については、4月13日に発表された質疑応答では明確にはされていません。ただ、以前発表された質疑応答に、役員が病気のために職務執行できなくなった場合の減額と職務に復帰した場合の増額は、いずれも支給額全額を経費に含めて良いというものがあります。この点を鑑みると、新型コロナが収束した場合に支給額を減額前の金額に戻した場合も、支給額全額を経費に含めることができると思われます。(三代川)