坂本会計

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2018.4 事業承継

自社株が非課税に?事業承継税制

1.事業承継が大きな問題に

現在、多くの会社で事業承継が問題となっています。経済産業省が発行した『事業承継に関する現状と課題について』によると、経営者の平均引退年齢は小規模事業者の場合、70.5歳となっています。これからの10年間で、団塊の世代の多くの経営者が引退時期に差し掛かります。

引退しようとしても、後継者が見つからずに、優良な会社であっても会社を清算しなければならないケースがあります。優良な会社が事業を止めてしまうのは、日本経済にとって大きな損失です。この損失を防ぐために、今回事業承継税制が改正されました。

2.事業承継税制とは

事業承継税制とは、後継者が、都道府県知事の認定を受ける非上場会社の株式等を、先代経営者から贈与又は相続により全部又は一定以上取得し、その会社を経営する場合には、その株式に係る贈与税又は相続税の納税を猶予する制度です。

会社を経営する上では、経営者が意思決定権を持つことが重要ですが、優良企業の株価は高額となっているケースが多く、先代経営者から後継者へ株式を引き継ぐことが困難となることがあります。税負担を軽減することで、事業承継しやすくしようというのが、今回の税制改正の狙いです。

3.改正点 ~対象となる株式~

これまでは、猶予の対象となる株式は、贈与税の場合は、議決権株式総数の3分の2に達するまで、相続税の場合は、議決権株式総数の3分の2に達するまでの80%相当額とされていました。

今回の改正により、議決権株式総数の100%までを猶予の対象とすることになりました。

4.改正点 ~雇用維持要件~

これまでは、事業承継税制を適用するためには、事業承継税制適用後5年間平均で、雇用の8割を維持しなければなりませんでした。雇用を維持できないと、猶予は終了となり、猶予されていた税額を全額納付しなければなりません。この雇用維持要件がこれまで事業承継税制の活用を阻害していました。

今回の改正により、5年間の雇用平均が8割未満であっても、認定支援機関の意見が記載された書類を都道府県に提出すれば、猶予を継続することができるようになりました。

5.猶予?免除?

事業承継税制は、納税を猶予する制度です。免除ではありません。猶予とは延期することです。

延期では意味がないと思われるかもしれませんが、猶予から免除に切り替わるケースがあります。それは、事業承継税制を適用して株式の贈与を受けた後継者が、次の事業承継のタイミングの際に、次の後継者に事業承継税制を適用して、株式を贈与することです。次の後継者に贈与をすると、最初に贈与を受けた者の贈与税は免除されます。

つまり、事業承継の都度、猶予と免除を繰り返して、株式を承継することで、自社株は非課税財産として承継され続けることになります。

事業承継税制を使うことで、株価を引き下げる対策は一切不要となります。

このように非常に大きな効果がある制度です。事業承継税制に関心のある方は、弊社担当者にご相談下さい。(三代川)