補助金を受領した場合の経理処理
1.さまざまな補助金があります
ものづくり補助金、事業再構築補助金など、さまざまな補助金があります。今回は補助金を受領した場合の経理処理を解説します。
2.原則的な経理処理
補助金の多くは、資産を取得するための資金として交付されます。
補助金を受け取った場合、受け取った補助金の全額を収益(例:雑収入、補助金収入)として計上します。
補助金は、申請→交付決定通知→確定通知→交付という流れで交付されます。補助金の全額を収益として計上するタイミングは、補助金交付時ではなく、確定通知を受領した時となります。
※確定通知受領と補助金交付とが同じ事業年度中であれば、補助金交付時に収益計上しても差し支えありません。
受領した補助金を原資に資産を取得した場合、自己資金を原資に資産を取得した場合と同じく、購入に要した金額が取得価額の資産として計上することとなります。
(事例)補助金600万を原資に、900万円の機械を購入した場合の経理処理
普通預金/雑収入 600
機械装置/普通預金 900
3.原則的な経理処理の問題点
2で解説した原則的な経理処理の問題点は、多額の法人税等が課税される可能性があることです。
確定通知を受領した時点で、補助金の全額を収益として計上します。
一方で、資産を購入するために支払った金額は一括で経費とはせずに、資産として計上した上で減価償却という形式で複数年に渡り経費として処理することとなります。
このような経理処理をすることにより、補助金を受領した事業年度については、補助金受領による収益が減価償却費を大幅に上回ることとなり、本業の損益の状況次第では、所得及び法人税等の額が多額となってしまう可能性があります。
4.特例の経理処理
3で述べた問題点を回避するための制度として圧縮記帳という制度があります。圧縮記帳とは受領した補助金の額を限度として、固定資産圧縮損という損失を計上することができる制度です。
2の事例において圧縮記帳を適用する場合、以下の経理処理を追加します。
固定資産圧縮損/機械装置 600
圧縮記帳を適用することにより、補助金受領に伴う収益が経費を上回る状況が生じなくなり、所得及び法人税等が多額となることがなくなります。
ただし、取得した資産の取得価額が減額されることにより、減価償却という形式で経費として処理される金額は少なくなります。
5.特例の処理は任意適用
4で解説した特例の経理処理は、必ず適用しなければならないものではなく、任意適用となります。本業の損益状況次第では、特例を使わない方が好ましいケースもあると考えられます。補助金を受領した場合、どのような経理処理を採用するのか慎重に検討しましょう。(三代川)