坂本会計

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2019.7 個人

不動産譲渡時の税金計算

1.譲渡益が生じるケースも

以前は、不動産を譲渡しても譲渡金額がその不動産を取得した際に支払った金額を下回る、いわゆる赤字であるケースがほとんどだったのですが、近年は黒字となり、確定申告をしなければならないケースが少なくありません。本誌面では不動産譲渡時の税金計算の留意点について、解説します。

 

2.納付するのは所得税・住民税

不動産を譲渡した結果、譲渡益が発生した場合、譲渡した翌年の3月15日までに確定申告を行わなければなりません。確定申告をすることにより、所得税を納付することとなります。確定申告書に記載した譲渡益の情報は、税務署から譲渡した人が居住している市区町村に共有されます。その結果、確定申告後の5~6月に通知される住民税の額には不動産の譲渡益に係る税額も反映されることとなります。

 

3.譲渡損益の計算方法

不動産の譲渡損益は、以下の式により計算します。

譲渡損益=譲渡金額-(取得費+譲渡費用)

取得費は、譲渡した不動産を取得した際に支払った金額、譲渡費用は不動産を譲渡する際に支払った仲介手数料や測量費用などの金額です。

取得費で注意しなければならないのは、建物については取得した際に支払った金額全額を譲渡金額から差し引くことができない点です。取得から売却までの間の価値減少部分、いわゆる減価償却費を加味しなければなりません。

取得時に支払った金額の方が、譲渡金額より大きいものの、減価償却を加味したところ、譲渡益が発生しており、確定申告をしなければならないケースはよくあります。注意が必要です。

 

4.譲渡益に対する税率

不動産の譲渡益に対する税額は、給与などの他の所得とは合算せず、分離して計算します。

不動産の譲渡益に対して掛けることとなる税率は、所得税と住民税とで異なり、さらに所有期間によって異なります。

不動産を譲渡した年の1月1日時点で、譲渡した不動産の所有期間が5年を超える場合は長期、5年以下の場合は短期に区分されます。令和元年中に譲渡した不動産については、平成25年12月31日以前に取得したものは長期、平成26年1月1日以降に取得したものは短期に区分されます。

長期、短期それぞれの税率は次の通りです。

【長期】所得税15.315% 住民税5%

【短期】所得税30.63%  住民税9%

 

5.確定申告しないと大変なことに

税務署は、売買や贈与による不動産の所有者変更に関する登記情報を定期的に収集しています。そのため、不動産を譲渡して譲渡益が発生したにもかかわらず確定申告が行われていないと、気が付きます。

また、不動産の譲渡については、税金計算上、さまざまな特例があり、特例を利用すると税額が発生しないケースがありますが、これらの特例の多くは確定申告をすることが条件となっています。思わぬ税負担が生じないよう、確定申告を忘れずに行いましょう。(三代川)