坂本会計

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2019.11 相続・贈与

住宅取得のための贈与は非課税?

1.原則は110万円

1月1日から12月31日までの間に、贈与を受けた金額が110万円を超える場合、贈与を受けた人は贈与税の申告・支払をしなければならないとされています。

ただし、贈与の目的によっては、110万円を超える金額の贈与を受けた場合であっても贈与税の支払をしなくても良いケースがあります。

本誌面では住宅を取得する目的で贈与を受けた場合の特例について、解説します。

 

2.住宅取得等資金贈与の非課税特例

その年の1月1日時点において20歳以上の人が直系尊属から現金の贈与を受けて、住宅を取得した場合には、非課税限度額までの贈与については贈与税を支払う必要がありません。

直系尊属には、父母、祖父母、曾祖父母などが該当します。義理の父母は、直系尊属ではないため、配偶者の父母から贈与を受けた場合は、この制度を適用することができません。

また、この制度は、現金を贈与された場合にしか適用することができません。父母や祖父母が所有していた土地の贈与を受けて、子名義の建物を建てる場合、土地の贈与はこの特例の対象外となり、贈与を受けた土地の評価額が110万円を超えるのであれば、贈与税を支払わなければなりません。

また、父と祖父の2人から贈与を受けた場合、2人から贈与を受けた金額を合計し、限度額を超えているかを判定することになります。つまり、非課税限度額は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人を対象に行うことになります。

 

3.非課税限度額

非課税限度額は、以下の3つの要素を勘案して決まります。

①取得する建物に係る消費税率が8%か10%か

②取得する建物が省エネ等住宅に該当するか

③建物の契約締結日がいつか

本誌面では、①が10%と仮定して解説します。

②が省エネ等住宅に該当しない場合、非課税限度額は、次の通りとなります。

a 契約締結日=~令和2年3月 2,500万

b 契約締結日=令和2年4月~令和3年3月 1,000万

c 契約締結日=令和3年4月~令和3年12月 700万

②が省エネ等住宅に該当する場合、非課税限度額は、次の通りとなります。

d 契約締結日=~令和2年3月 3,000万

e 契約締結日=令和2年4月~令和3年3月 1,500万

f 契約締結日=令和3年4月~令和3年12月 1,200万

 

4.適用上の留意点

この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた現金の全額を、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得等に充当し、贈与を受けた人が新たに取得した住宅に居住することが必要です。

ただし、翌年3月15日までに完成しない場合でも、工事が棟上げ等まで進んでいる場合や贈与を受けた翌年の12月31日までに居住を開始することが確実であると認められる場合には、この特例を適用することができます。

また、贈与を受けた金額が、非課税限度額の範囲内で贈与税を支払う必要がない場合でも、税務署に対して贈与税申告書は提出する必要があります。(三代川)