坂本会計

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2013.6 相続・贈与

遺言書の概要

1.被相続人の意思

相続が発生した際に、相続財産を取得する相続人の範囲や法定相続分は、民法で定められています。ただし、被相続人が自らの意思を書面に残すことで、法定相続とは異なる相続を実現することもできます。この書面のことを遺言書と言います。

2.有効な遺言書とするためには

遺言書は、満15歳以上で、かつ遺言書の作成時点で遺言をする能力を有している者であれば、誰でも作成することができますが、法的に有効な遺言書とするためには、民法に定める方式に従う必要があります。
民法に定める方式のうち、よく用いられるものは、自筆証書遺言、公正証書遺言の2つです。

3.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、被相続人が、その全文、日付及び氏名を自筆し、これに印を押して作成する遺言です。押印で使用する印鑑は、認印でも良いこととされています。費用がかからず、証人もいらず、手軽な方法ですが、遺言書の紛失や偽造・変造、要件を満たさず遺言が無効となりやすいこと、文意が不明瞭なことによる『争族』の発生などのリスクがあります。

4.公正証書遺言

公正証書遺言とは、被相続人が遺言の趣旨を口頭で述べ、公証人がこれを筆記するなどして、公正証書を作成することによって行う遺言です。公正証書遺言の作成に際しては、2人以上の証人の立会いが必要となります。公正証書遺言のメリットは、作成した遺言書が公証役場に保管されるため偽造・変造のリスクが低い点、要件を満たさないことで遺言書が無効となるリスクが低いこと、被相続人が字を書くことができなくても作成できる点などです。一方、デメリットは、公正証書作成に際し費用がかかること、公証人や証人2人以上の立会いが必要となり、手続きが煩雑であることなどがあります。

5.遺言書が有効となる場合

遺言書が有効となるのは、以下のようなケースです。
①子どもがいない場合
②子ども同士の仲が悪い場合
③法定相続分とは違う割合で財産を相続させたい場合
④法定相続人以外の人や団体に財産を渡したい場合
⑤自宅以外に分ける財産がほとんどない場合

6.おわりに

「子ども同士の仲が良い」又は「自分の財産は少額」で、遺産分割で揉める可能性は低いから、遺言書を作成する必要はないとお考えの方も少なくないかと思います。そのお気持ち自体はよくわかりますが、自らの意思を文書に残すこと自体が価値のある行為ですし、文書に残しておくことで、相続人同士の無用なトラブルを避けられる可能性が高くなります。ぜひ、遺言書を作成することをお勧めします。なお、弊社では遺言書の作成サポートサービスも提供しています。ご興味のある方はぜひお気軽にご相談下さい。
(参考資料)
・日本経済新聞出版社『2013年版よくわかる相続』
・大蔵財務協会『図解民法(親族・相続)』
・すばる舎『磯野家の相続』