坂本会計

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2023.7 税制改正

他社の欠損金を使える?グループ通算制度

1.令和2年度税制改正項目

令和2年度税制改正において、連結納税制度を見直し、グループ通算制度へ移行することが決まり、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用が開始されています。本誌面ではグループ通算制度について解説します。

 

2.グループ通算制度とは

グループ通算制度とは、完全支配関係のある内国法人グループにおいて損益通算を認める制度です。

(例)親法人P社 黒字1,000万円  子法人S社 赤字600万円

グループ通算制度を適用しない場合は、P社の法人税(地方法人税や県民税等を含まず、以下同じ)は約167万円、S社の法人税は0円です。

これがグループ通算制度を適用すると、P社の法人税は60万円(※)となり、適用しない場合と比べると法人税は100万円以上少なくなります。

(※)(1,000万-600万)×法人税率15%

 

3.グループ通算制度の対象税目

①対象税目

グループ通算制度は、法人税、地方法人税のみが対象です。法人事業税、特別法人事業税、法人住民税、消費税等は対象外です。

②対象となる欠損金の範囲

グループ通算制度採用前から有する欠損金は通算制度の対象外となります。損益通算の対象となるのは、通算制度採用後に発生した欠損金のみです。

 

4.通算制度対象法人

グループ通算制度の対象となるのは、親法人と子法人との間に親法人による完全支配関係がある法人に限ります。完全支配関係とは、直接か間接かは問わないですが、親法人が子法人の発行済株式の全部を有している場合における法人相互の関係を言います。

グループ通算制度に類似する制度として、グループ法人税制という制度があります。オーナー一族が2社以上の株式を100%所有している場合、グループ法人税制の適用対象とはなりますが、本誌面で取り上げているグループ通算制度は適用対象外となります。

なお、完全支配関係がある法人が複数ある場合に、通算制度の対象とする法人を任意で選択することはできません。通算制度を適用する場合は、完全支配関係にある法人全てが対象となります。

 

5.グループ通算制度を使うためには

グループ通算制度は、完全支配関係のある内国法人グループがある場合に自動的に適用される制度ではありません。親法人及び完全支配関係がある全ての子法人の連名で、親法人の所轄税務署長に対し、通算制度の承認の申請書を提出し、承認を受けることで適用されます。

承認申請書の提出期限は、通算制度の適用を開始しようとする親法人の事業年度開始の日の3ヶ月前までとされています。

グループ通算制度は、まだ認知度が高くない制度ですが、グループによっては非常に有効な制度です。ご関心のある方は税理士等の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。(三代川)