もうすぐ年末調整 今年から所得税はこう変わる
1.3つの改正
今年も年末調整に必要な用紙が配付される季節となりました。
令和2年分より、所得税では以下の内容が改正されます。
①給与所得控除の縮小
②所得金額調整控除の創設
③ひとり親控除の創設
2.給与所得控除の縮小
事業所得や不動産所得は、収入金額から実際にかかった経費を差し引いて残った金額が課税対象となります。
給与所得は、収入金額から実際にかかった経費を差し引くことができません。実際にかかった経費は差し引くことができませんが、概算経費を差し引くことができるしくみとなっています。この概算経費のことを給与所得控除と言います。給与所得控除の金額は、給与収入に比例して増えるしくみになっています。
以前は給与収入が増えれば、給与所得控除の金額も青天井で増えるしくみになっていましたが、平成25年から給与収入が一定の金額以上となった場合、給与所得控除の金額は一律245万円(その後230万円、220万円に縮小)となりました。
昨年までは、給与所得控除の上限が適用されるのは給与収入が1,000万円超の場合でしたが、今年より給与収入が850万円超の場合、給与所得控除の金額は一律195万円となります。上限が適用されるハードルが下がり、かつ給与所得控除の金額も縮小となり、増税につながる見直しとなっています。
3.所得金額調整控除の創設
給与収入が850万円超で、かつ以下のいずれかに該当する人に対し、所得金額調整控除という控除が適用されることとなりました。
・自身が特別障害者
・23歳未満の扶養親族を有する人
・特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する人
所得金額調整控除の金額は次の算式により計算します。
{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%
4.ひとり親控除の創設
この項目は、誌面のスペースの都合上、女性のみを対象に解説します。
寡婦控除という制度があります。この制度は、離婚又は死別した女性が適用することができ、未婚のひとり親は適用することができませんでした。
令和2年より寡婦控除とは別にひとり親控除という制度が創設されました。ひとり親控除は現在結婚していない又は配偶者の生死が明らかでない人で、以下の①~③の要件を全て満たす人に対して適用されます。
①同一生計の子がいること
②給与収入が約677万円以下であること
③事実婚をしていないこと(=住民票の続柄に夫(未届))と記載されている人がいないこと)
ひとり親控除の控除額は35万円です。ひとり親控除の創設により寡婦控除の適用範囲も見直しになっています。(三代川)